しゃおれんの旅日記

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石澤一由「古代天皇の実年代を探る」

面白い本を見つけました!
 
古代の天皇崩御時の年齢や治世年数が信じられないくらい長いことから、
初代神武天皇の即位を辛酉革命説に従って無理に紀元前660年にしたために
他の天皇の年齢や治世年を引き延ばしたとか、架空の天皇を作り出したというのが今ではほぼ定説ですよね。
 
でも、この本はすごく大胆!
魏志倭人伝や日本書記、古事記などから筆者は古代暦と古代治世年という仮説をたてています。
 
ざっくりまとめると、
暦が伝わるまでは、古代人たちは太陽の動きで1年を数えていて、現在の暦と違う年のとらえ方をしていたと。
 
古代暦は「太陽が真東から昇る日を1年の始まりとする」春分から始まる1年と秋分から始まる1年の合計2年が、
現在の1年にあたるものとし、
古代暦も1年が12か月あったとしているが月の満ち欠けの約15日を1か月としていたのではないかと。
 
古代治世年は、古代暦の1年の中間の夏至冬至には日の出の方角が転回する日なので、古い年から新しい年へとかわる日とも考えられるため、天皇の治世については、現在の1年を4年と考える古代治世年が使われていたと。
 
天皇の年齢を数えるに、即位前は古代暦を使い即位してからは古代治世年を使って数えていたとします。
 
この考え方によれば120歳で亡くなったとされる崇神天皇も、即位前古代暦で52歳(実年齢26歳)、治世年数68年は実際は17年となり、43歳で崩御、非常識な年齢ではなくなります。
 
 
このようにそれぞれの天皇の実年齢や治世年数を検証しなおし、親子関係が疑わしいものは兄弟ではないかとか。開化天皇孝元天皇は兄弟では?とか。(そもそも、初代から12代までがきれいに父子で継承しているのも疑わしい。このあたりも架空説が出るもとになるけど)
 
 
治世年数も古代は長いと思われがちですが、平均してみれば他の時代と大差ない。(院政時代は例外として)
 
そして、年代のはっきりしている推古天皇崩御から順に遡っていくと、神武天皇の即位は紀元154年になりました。
 
 
ざっくり書いているのでマユツバに思われますが、こちらの本をお読みいただければなるほどーーと思えます。
根拠もあげて丁寧に説明してあります。
 
 
でも、私が一番読んでいただきたいのは第四章から!
 
これらの天皇の実年代を検証しなおしたところで、記・紀の記述と現時点で分かっている歴史上の事柄とを考察し、大胆な物語が展開されていて読んでいてすごく面白かったです。
 
ざっくり書くと・・・
 
・国生み神話でイザナギイザナミの命が生んだ島は、佐渡大倭豊秋津島以外は淡路島以西の島々で中国地方が入っていない。そして、名前に「天の○○」とつく島が多い。
 
・この「天」は注で「アマ」と読むと注釈がついていることから、天照大御神の一族は天族=海人族。
対馬から日本海にかけての島々を拠点として海上貿易を握っていた一族なのではないかと。
 
天の○○とついていない中国地方は大国主支配下にありました。
国譲り神話がありますが、天族VS出雲族の戦いがあったのでは?!と。
天孫降臨は武力侵攻を暗示しているのではないかと。
 
「天から降った」とされる天孫たちですが、言い換えれば天(対馬壱岐隠岐など)から葦原中国や筑紫の日向に向かって領土を求めて侵攻していったと。
 
出雲地方を抑え、筑紫・豊・日向まで支配下においた天孫族。ここに「倭国」誕生ーーー。
 
 
神武の東征について、なぜ、日向からはるか遠くの近畿を目指したのかですが、
ニニギ命の子孫の神武は倭国支配下の王族の一人として一地方を支配するだけでなく自分の国が欲しくなって「倭国の領域外」(中国地方よりも東)へ東征せざるを得なかったというのが真相というのです。
 
ひゃーって思いました。
 
この後も邪馬台国(筆者は邪馬台国とはいわず女王国と表記していましたが)と倭国の関係、仲哀天皇磐井の乱も出てきます。
ネタバレになるので書きません。
ぜひ読んでみてください。
 
あまりに大胆でそれでいて納得できる仮説だったので、「すごーい!面白いよー!」とそばにいた師匠(夫さん)に無理やり聞かせるという迷惑行為に出てしまうほど。
 
 
以前に壮大な歴史小説のブログを読んだり、今回の本を読んで思ったこと。
 
「おかしい」と思ったことをつきつめて調べてみるということは大事だと頭が下がります。
寿命が古代人なのにこんなに長いなんておかしい、と思わず、もしかして?と暦から疑う。
そのために紀や記の文章を一文ずつ検証するような作業は私には到底無理だけど。
記や紀は後代に作られた作り物だと思っていましたが、案外真実へのヒントが隠されているのかも。
 
真相がわからないから宝探しのようで楽しいという気もします。
 
でも、タイムマシンがあったらあっさり答えを見たいという思いもあります(笑)。
邪馬台国は九州にあるかどうか(私は九州派)。
・王朝交代はあったのか(崇神天皇応神天皇継体天皇の時に王朝交代したというのが一般今は一般的らしいですが)。
 
はっ、これって書き出すときりがないのでこの辺で。