しゃおれんの旅日記

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世界遺産 富岡製糸場に行ってきました

私の生涯の目標の一つに「世界遺産をできるだけ訪れる」というのがあるのですが、
毎年増え続けるので完全制覇は絶対無理。(2016年現在で1052件)
そもそも、世界遺産に認定されなくても歴史的、自然的に価値がある場所というものは多いのですが・・・

でも、機会があれば行ってみたいと思っていたところ、
今回甲武信岳に登る前に師匠が富岡製糸場に連れて行ってくれました。
(登山の時は常に運転してくれて本当にありがたいことです)

富岡製糸場世界遺産になったのは、2014年のこと。決定当初は見学者で大混雑だったようですが、
2周年となった今では土曜の午後でも見学は程よい人数で良かったです。
入場料1000円のチケットも並ばず買うことができ、
ガイドツアー(200円。所要時間40分ほど)で説明を聞きながら周りました。
個人でも周れるようですが、説明を聞けてわかりやすく良かったです。

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門を入ると見えるのが東置繭所。当初は蚕は年に一回しか繭を作らなかったので、年間を通して糸を生産する製糸場では一年分の繭を保管する必要があったとのこと。東西の置繭所は国宝です。


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要石に「明治5年」とあります。

明治5年に主要な建物が完成し操業が開始されるのですが工女が集まらず(技術指導にあたるフランス人の飲むワインを血だと人々は思いこみ、製糸場に行ったら生き血をとられるというデマが流れたため)、初代工場長の尾高惇忠は娘の勇(14歳)を工女として入場させたという話がパンフレットに載っています。

この富岡製糸場は操業開始当時は、官営模範工場だったので、士族の娘が多く働き、一日の労働時間も平均7時間半(電気がないので暗くなったら働けないとガイドさんが言っていた)、日曜日は休み、夏休みとお正月休みもあり、工場内には夜学もあったとのこと。ここで、技術を学んだ工女たちは故郷に戻り指導者として活躍したそうです。病院もあり、診察料は工場持ち、福利厚生もちゃんとしてますねー。

ああ野麦峠」とは時代や地域が違う(富岡製糸場開始は明治初期、野麦峠のほうは明治末から大正期にかけて飛騨地方の貧しい農村の少女たちが岡谷にある製糸工場へ劣悪な環境で長時間労働を強いられた)のですが、製糸工場と聞くとつい近代日本の負の部分を連想してしまいます。
でも、官営工場から民間に払い下げられた後は、だんだんと近代日本の資本主義形成期にありがちな労働状態になっていったようです。

でも、昭和62年まで操業していたということは初めて知りました!

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分かりづらいのですが、煉瓦の下二段は普通に積んであるのですが、三段目から長い面と短い面が交互になっているのです。これがフランス積みという煉瓦の積み方だそうです。(ガイドさん談)それだと向こう側がガタガタになってしまうと思いきや、ちゃんと向こう側にももう一つ置いてあるので大丈夫だそうですよ。


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置繭所は104m、真っ赤なサルビアが川のようでした。

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操糸所。繭から生糸を作る施設。長さ140mの木骨煉瓦作り(置繭所もそうですが、「木骨」というのがおどろきです)。内部には操業停止当時の自動操糸機が完全な形で残されています。

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中に柱がないことで、後に機会が変わって大型化しても当初の建物が残ったとのこと。
この内部、日本史資料集で見た富岡製糸場の内部の絵そのもの!

他に敷地内には、寄宿舎だけでなく、技術士のブリュナ一家の巨大な邸宅(首長館)や、検査技師たちや指導者のフランス人女性のための建物などもあります。


世界遺産には、この富岡製糸場だけでなく、絹産業遺産群として「田島弥平旧宅」「高山社跡」「荒船風穴」もあわせて認定。
田島弥平旧宅は、瓦屋根に換気用の越屋根をつけ、近代養蚕農家の原型になったということです。
高山社は、養蚕法の研究開発をし、近代養蚕法の「清温育」が日本のみならず海外にのひろまったそうです。
荒船風穴は、蚕種(蚕の卵)を貯蔵する施設で、冷蔵技術を活かして、年一回だった養蚕を複数回可能にして、繭の増産に貢献したそうです。

明治初期において、生糸は日本の主要輸出品だったので、富岡製糸場とその他の産業遺産群はすごく価値があるのですね。
ちなみにガイドさんに聞きましたが、生糸と絹糸の違いは「生糸は蚕の繭から取った糸を数本よったままのもので、絹糸にするには薬品でたんぱく質を取り除いて精錬したものだそう」です。

日本史の授業で知ってはいましたが、やはり自分の目で見ると興味深く、充実した見学となりました。

これで、生涯訪れた世界遺産の数は今のところ137ヶ所。
上野の国立西洋美術館などは何度も行ったことあるけど、まさか今年になって世界遺産になるとは・・・
次はどこに行けるかな?